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企業における営業秘密の管理実務
Wed Jan 17 13:07:00 CST 2018 発表者:华诚小編

企業における営業秘密の管理実務

■ 賀暁博 曹衣暉

市場競争がますます激しくなるにつれて、企業の間での実力の差は既にその企業が所有する物質的な資本にとどまらず、営業秘密が企業の無形資産として日増しに企業が市場競争において無視できない一大武器となっている。しかし、一部の企業は営業秘密の保護、管理及び紛争の解決について馴染みがなく、実務においてこれらの企業が所有する営業秘密は侵害されやすく、訴訟などの紛争も引き起こしやすい。従って、営業秘密を把握し、かつ効果的に管理することは企業の知的財産権戦略における重要な一環である。

一、営業秘密

(一)定義及び構成要件

1993年の「不正競争防止法」(以下、「旧法」という)の第10条では、営業秘密とは、公知ではなく、権利者に経済的な利益をもたらすことのできる、実用性を備え、かつ権利者が秘密保持措置を講じている技術情報及び経営情報をいうと規定されている。「不正競争防止法」(以下、「新法」という)が2017年11月4日に改正されて通過し、2018年1月1日から施行された。新法第9条では、営業秘密の定義の文字表現について一定の修正が行われている。即ち、営業秘密とは、公衆に知られていない、商業的価値を有し、かつ権利者が相応の秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報をいうと規定されている。上記の改正は文字表現の変化に言及しているだけで、構成要件などの実質的な変更には言及していない。当該定義によると、営業秘密には経営情報及び技術情報が含まれている。国家工商総局による「営業秘密侵害行為の禁止に関する若干の規定」(以下、「若干規定」という)第3条によると、経営情報及び技術情報には主に、設計、プロセス、製品調製方法、製造技術、製造方法、管理ノウハウ、顧客名簿、商品の仕入先・供給先情報、生産販売戦略、入札における最低基準価格及び入札書類の内容などの情報が含まれている。

但し、全ての経営、技術情報を営業秘密にできるわけではない。上記の規定によると、企業の経営、技術情報が営業秘密として法によって保護されるには、一定の条件に符合する必要がある。

1、秘密性

秘密性とは、即ち非公知性のことである。営業秘密は公衆が知ることのできないものでなければならず、市場で入手できない情報でなければならないため、秘密性は営業秘密の構成要件において最も重要な要件である。中国の「最高人民法院による不正競争民事事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」の第9条では、秘密性の認定基準について具体的に規定している。例えば、既に公開されている常識もしくは業界の慣例、又は報告会もしくは契約書により既に公表されている情報、及び製品に対するモニタリングや複製を通して容易に入手可能な情報は、いずれも秘密性を有しない。

特に注意を要する点としては、顧客名簿の秘密性の問題である。事実上、顧客名簿及び顧客情報が裁判所による実際の審判過程において営業秘密と認定されるのは比較的難しいことである。これは営業秘密が秘密性を有しなければならないという要求に由来する。企業がこの顧客名簿及び顧客情報を営業秘密であると主張する場合には、当該名簿及び情報と公知情報との間に区別があることを証明しなければならない。例えば、企業が労力や金銭を費やして作り出した顧客リストは顧客の購買における嗜好、決済方法、価格のボトムラインなどの情報を反映することができ、これらの情報は企業が市場から直接把握して獲得したものではなく、長期間にわたって顧客とコミュニケーションを取って積み重ねた上で獲得したものであるため、公知情報とは明らかな区別がある。

2、価値性

営業秘密の価値性とは、営業秘密が現在、又は将来使用されることを通して、権利者に現実的な、又は潜在的な経済的価値をもたらすことをいい、当該価値性の最も本質的な特徴は、あらゆる人が当該営業秘密を握ることで競争優位性を持つようになるということである。本質上から見れば、旧法における「権利者に経済的な利益をもたらす」と「実用性」はいずれも価値性を示してたもので、二者は一つの要件にまとめられる。「実用性」は営業秘密の独立の構成要件ではなく、新法では「実用性」を削除し、「価値性」に更に重点を置いたのである。

3、秘密保持性

秘密保持性は営業秘密をその他の権利と区別する根本的な特徴で、これは、主観的には、企業がこの情報を営業秘密として保護し、客観的には、営業秘密の価値と同等の保護措置を講じることを意味し、また、実務においては、保護の措置には知ることができる範囲の制限又は知ることができる従業員の権限の制限などが含ふくまれることを意味する。

上記の営業秘密の3つの構成要件のうち、価値性は比較的満たしやすいが、秘密性及び秘密保持性の要件を構成する難易度は比較的高い。


(二)範囲及び媒体

まず、営業秘密の範囲については、企業は情報の一部が営業秘密を構成すると主張する場合、広範な保護範囲を指摘する必要があるだけでなく、更に具体的な保護範囲を明確にする必要がある。例えば、ある企業がプラスチックプロファイルの製造工程を保護しようとして、その際に全体としてのプラスチックプロファイルの製造プロセスが営業秘密であると主張するというのは実行不可能なことで、企業は、例えば、製造用金型のサイズ、独特な冷却方式など、具体的な保護範囲を明確にしなければならない。法律が保護するのは製造工程に関わる全ての技術情報ではなく、一つの明確な営業秘密の範囲である。

次に、営業秘密の媒体については、営業秘密は性質上は一種の情報で、最初は人々の考えから生まれたもので、営業秘密は有形な媒体をもって外部に示してはじめて、このような権利が保護を得られるのである。しかし、営業秘密は決してその媒体に等しいわけではない。営業秘密の媒体は種類が多く、文字、設計図、取扱説明書、及び電子資料などを含み、これは、企業が保護する営業秘密の対象が情報であるべきで、当該秘密の媒体に限らないことを意味する。


(三)営業秘密保護の特徴

まず、営業秘密の保護には一定のメリットがある。例えば、保護を受ける期間及び地域が制限されないなどである。コカコーラ製造のレシピは今に至っても相変わらず営業秘密として保護されており、かつこの状態は将来まで続いていき、勝ち取った競争優位性を企業のために維持し続ける可能性がある。また、営業秘密の保護により企業の秘密情報の公開によるリスクが下がるため、企業は秘密情報の公開で自社が競争優位性を失うことを心配する必要がない。

次に、営業秘密の保護にも一定のデメリットがある。営業秘密は法律が特別に規定した権利ではなく、特許権、商標権などの権利とは区別があり、法律が営業秘密を保護するのは実質的に企業の権益を守るためで、その保護の安定性は特許権、商標権などの権利への保護のほどではなく、かつ企業が講じる秘密保持の措置に左右される。これは、企業自身が秘密情報について秘密保持の措置を講じていなかった場合、当該営業秘密を失う可能性がかなり高いことを意味する。なお、特許権と区別されるのは、企業は他の企業が同一の営業秘密を開発して使用することを制限することはできず、当該営業秘密が相手方が独立して開発し、完成させたものである限り、相手方は使用する権利を有する。

 

二、営業秘密を侵害する行為

旧法の規定に比べ、新法は営業秘密侵害の表現形式について文字表現の面から一定の修正を行ったが、実質的な変化には言及しておらず、新法の第9条第1項、第2項の規定によると、営業秘密の侵害を構成する行為には主に4種類ある。一、窃盗、賄賂、詐欺、脅迫又はその他の不正手段をもって営業秘密を獲得すること。二、不正手段を用いて獲得した営業秘密を公開し、使用し、又は他人に使用を許諾すること。三、約定又は権利者の営業秘密保守についての要求に反して、権利者が握っている商業秘密を開示し、使用し、又は他人に使用を許諾すること。四、営業秘密の権利者の従業員、元従業員又はその他の組織、個人が前項に挙げられた違法行為を実施したことを第三者が明らかに知りながら、又は知り得るにもかかわらず、当該営業秘密を獲得、開示、使用し、又は他人に使用を許諾すること(第9条第2項)。四の状況については、「企業の従業員」が営業秘密の侵害を行う主体身分になることができること、及び問うことができる責任が暗に含まれている。 

上記の営業秘密侵害の状況が実務において比較的よく現れているのは二、三、及び四の状況である。

営業秘密の流出ルートは以下のことを含むが、これらに限らない。一、企業の専門人材及び従業員が流動により秘密保持契約又は競業避止の条項に違反し、企業が握っている営業秘密を使用し、又は開示する。二、企業のOEMなどの一環において、相手側が関連する契約書の秘密保持の約定を守らずに営業秘密を漏洩する。三、関係者の訪問時に、企業は秘密保持の措置を講じずに営業秘密を漏洩される。四、企業が論文、専門書を発表したり、又は学術交流を行った時に営業秘密が他人に盗み撮られる。五、商業スパイが直接、又は間接的に盗み取る。

企業は営業秘密の侵害行為を発見した後、権利行使の過程において、以下のいくつかの面に注意する必要がある。一、企業は侵害された疑いのある秘密情報が営業秘密の構成要件を満たしていることを立証しなければならず、その構成要件には、営業秘密の秘密性、当該秘密が有するビジネス価値、既に講じた保護措置、及び具体的な保護範囲が含まれる。二、企業は侵害の疑いのある一方が使用した秘密情報と自身の営業秘密が同一のものであること、又は実質的に類似することを証明する必要がある。三、企業は侵害の疑いのある一方が営業秘密を取得した手段の違法性を証明しなければならない。営業秘密自体の隠匿性のために、三の証明条件は往々にして企業が最も達成し難いものである。従って、裁判所は実務において折衷の処理方式を取っている。即ち、企業は相手側に関連の営業秘密に接触する機会があること、例えば、従業員が当該企業を離職してからまた侵害の疑いのある一方に雇用されたという状況を証明するだけで、接触の機会があったと認定できる。企業が接触の可能性を証明できた場合、立証の責任に転移が発生し、この時には侵害の疑いのある一方が自らの使用した情報は当該企業の営業秘密を使用したものではなく、自主研究開発又は公開ルートなどの方式を通して取得したものであることを証明しなければならない。証明できなかった場合には、他人の営業秘密を侵害するリスクに直面する恐れがある。

三、営業秘密の保護

(一)企業の組織構成

企業が効果的な営業秘密管理制度を構築しようとする場合、一定の組織構成を構築することを考慮してもよい。営業秘密の保護について企業に比較的高い需要がある場合、知的財産権を扱う部門または営業秘密の管理を専門的に担当する部門を設けることを考慮してもよい。企業に特別な需要がない場合には、責任者に営業秘密の管理を委任してもよいが、当該責任者は総経理またはそれ以上の人員であることが望ましい。  


(二)営業秘密の内容の保護

営業秘密の管理において保護を要する内容については、以下のいくつかの面に注意を払う必要がある。一、企業は明確な営業秘密の保護範囲を画定しなければならない。二、企業は訪問者に対して一定の措置を講じて管理を行い、事前に訪問客に同人の訪問の地域範囲及び行為規範を知らせる。三、企業は従業員の管理を重んじて、従業員と秘密保持契約を締結し、関連する従業員に向けて営業秘密保護の研修を行う必要がある。四、営業秘密の登録を行い、例えば、極秘、機密または秘密などの分類管理を実施する。五、営業秘密の早期警戒メカニズムを構築し、営業秘密侵害行為に遭遇した際は、侵害された情報を引き続き伝播するのをを控えること及び証拠保全を取ることを含む事前の対応策を講じる。


(三)弁護士の役割

弁護士は企業の営業秘密管理における重要な力として、内部に対しては、企業の営業秘密内部管理システムの構築を手伝い、クライアントが適切で効果的な秘密保持制度を構築するよう協力し、クライアントが営業秘密の範囲を画定するよう導き、クライアントが従業員に向けた研修、管理を行うよう導いて、クライアントが専有技術の審査を完成するよう手伝うことができる。外部に対しては、企業が技術ノウハウの保護協議書を締結するよう協力し、かつ訴訟に参加して企業に権利行使に協力することができる。

営業秘密の価値は企業の経営活動において日増しに顕著に示されてきているため、情報の競争は市場競争の一大争点になるに違いない。企業は完全で、効果的な営業秘密の管理制度を構築してはじめて、激しい市場競争の中で不敗の地に立つことができるが、これは間違いなく企業内部及び外部の各方面による共同の努力が必要である。

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